鶯は春の訪れを知らせる鳥
春の訪れを告げる鶯の声は、古来より日本の詩人たちに愛されてきました。平安時代の歌集「古今和歌集」には、鶯の鳴き声を詠んだ和歌が数多く収められています。今回は古今和歌集に焦点を当て、さまざまな視点から鶯について歌っている和歌の中から5つを厳選して紹介していきます。
様々な視点から見る鶯
1. まだ雪の降っている春の始まりに鶯を想う歌
二条の后の春のはじめの御歌
雪のうちに春は来にけり鶯の氷れる涙今や解くらむ
古今和歌集 春上より
訳:冬のものの雪が残っている間に、春が来てしまったことよ。谷間に春を待ってこもっている鶯の、寒気のわびしさにこぼして、凍っている涙は、今は溶けていることであろうか
2. 春になり、鶯が鳴き始めた時期の歌
雪の木に振りかかれるをよめる 【素性法師】
春たてば花とや見らむ白雪のかかれる枝に鶯の鳴く
古今和歌集 春上より
訳:春になったので、梅の花と見るのであろうか。白雪の降ってかかっている枝に、鶯が鳴いていることよ。
3. 同じく春の象徴とされる、梅の花と歌われる鶯
寛平の御時、后の宮の歌合の歌 【紀友則】
花の香を風のたよりにたぐへてぞ鶯誘ふしるべにはやる
古今和歌集 春上より
訳:梅の花の香を、風のたよりに添わせて、この花の咲いたことを知らずにこもっているだろうところの、谷の鶯を誘い出す案内に遣る。
4. 鶯が春の訪れを象徴していることがよく現れている一首
寛平の御時、后の宮の歌合の歌 【大江千里】
鶯の谷より出づる声なくば春来ることを誰か知らまし
古今和歌集 春上より
訳:もし鶯の谷から出て鳴くこの声がなかったからば、春が来ていることを誰が知ろうか。
5. 花が咲くのが遅い山里の鶯を歌った歌
寛平の御時、后の宮の歌合の歌 【在原棟梁】
春立てど花も匂はぬ山里はものうかる音に鶯ぞ鳴く
古今和歌集 春上より
訳:春が来ても梅の花も咲かない、春遅い山里は、つまらなそうな声で鶯が鳴いていることであるよ。
まとめ
古今和歌集に詠まれた鶯の和歌は、春の風景を色鮮やかに描き出しており、雪景色の中にやってくる鶯の姿や鳴き声が思い起こされて趣深いものばかりです。鶯の声を通じて感じる春の訪れは、平安時代の人々にとっても特別な意味を持っていたことが伺えます。古今和歌集にはよりたくさんの「鶯」に関する和歌が収められていますので、ぜひ自身の目で読み、お気に入りの和歌を見つけてみて下さい!