古今和歌集とは?成り立ちや代表的な歌人たちについて

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古今和歌集とは?成り立ちや代表的な歌人たちについて

古今和歌集とは

古今和歌集とは、905年(延喜5年)に醍醐天皇の命令によって編纂された最初の勅撰和歌集であり、紀友則、紀貫之、凡河内躬恒、壬生忠岑らによって編み出されました。

平安時代初期の人々の文化や価値観が反映された、日本文学においても重要な歌集の一つです。

勅撰和歌集とは…

勅撰和歌集とは、天皇の名により編集された和歌集のことです。

平安時代の古今和歌集をはじめとし、室町時代の新続古金和歌集まで500年以上にわたって合計21もの勅撰和歌集が編集されました。

古今和歌集から新古今和歌集までの八つの勅撰集を「八代集」、その後に編集された新勅撰和歌集以降のものを「十三代集」といい、総称して「二十一代集」と呼ばれています。

20巻からなる、古今和歌集の構成

すべて千歌二十巻、名付けて古今和歌集という

紀貫之による仮名序の言葉にもあるように、古今和歌集の構成は全部で20巻、歌の数は1111首とされています。(定家本より)

巻ごとのテーマ

・巻一 春上…雪景色の中に春の訪れを感じさせる歌

・巻二 春下…桜が散っていく春の終わりに焦点を当てた歌

・巻三 夏…時鳥とともに

・巻四 秋上…紅葉や悲しみ、秋の始まりを告げる歌

・巻五 秋下…紅葉や悲しみ、秋の深まりを描いた歌

・巻六 冬…雪と年の暮れについて歌った歌

・巻七 賀…祝賀の場面や人生のお祝いごとの歌

・巻八 離別…別れについて歌った歌

・巻九 羈旅…旅の最中での思いを歌った歌

・巻十 物名…物の名前を使った言葉遊び的な歌

・巻十一 恋一…「読み人知らず」を中心とした恋の始まり、会えない恋の歌

・巻十二 恋二…歌人達の恋の始まり、会えない恋の歌

・巻一三 恋三…初めての逢瀬を中心とした歌

・巻一四 恋四…成就した恋愛からその終わりまでの歌

・巻十五 恋五…終わった恋とその後の歌

・巻十六 哀傷…人の死に関する歌

・巻十七 雑上…どの分類にも当てはまらない日常の歌

・巻十八 雑下…どの分類にも当てはまらない日常の歌

・巻十九 雑躰…長歌などの、歌の型が五・七・五・七・七から外れた歌

・巻二十 大歌所御歌・神遊びの歌・東歌…天皇や貴族たちの儀礼などの場で歌われた歌


このように、四季歌と恋歌を中心に様々な種類の歌が分類されています。

季節の流れや気持ちの移り変わりを順番に整列させているところもまた風流さを感じさせます。

代表的な歌人たち

古今和歌集には撰者の4人の歌人、六歌仙の6人をはじめとするたくさんの歌人の和歌が収録されています。

代表的な歌人とその人が読んだ和歌について紹介していきます。

1. 紀貫之(一〇二首)

・古今和歌集の撰者の1人で、「土佐日記」の作者としても有名

・紀貫之の代表的な和歌

春立ちける日よめる

袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つ今日の風やとくらむ

古今和歌集 春上より

訳:夏の日に袖を濡らして両手ですくった水が、秋も過ぎて、冬になって凍りついていたのを、立春の今日の風が溶かしていることだろうか

2. 凡河内躬恒(六十首)

平安時代の貴族で、古今和歌集の撰者の1人

・凡河内躬恒の代表的な和歌

春の夜梅の花をよめる

春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やはかくるる

古今和歌集 春上より

訳:春の夜の闇は、筋道の立たないことをするなあ。梅の花は、色が見えなくても香までは隠れようもないのだから。

3. 在原業平(三十首)

六歌仙の中で最も古今和歌集に収められた和歌の数が多く、古今和歌集においても代表的な歌人の1人

二条の后の春宮のみやす所と申しける時に、御屏風に立田川に紅葉流れたるかたをかけりけるを題にてよめる

ちはやぶる神代も聞かず龍田川唐紅に水くくるとは

古今和歌集 秋下より

訳:不思議なことの多かった神代の昔にも聞いたことがない。龍田川が、流れる水を鮮やかな紅色に絞り染めにするなんて。

4. 小野小町(十八首)

六歌仙の1人で、唯一の女性。恋の歌が多く収められている

題しらず

花の色は移りにけりないたづらに我が身世にふるながめせしまに

古今和歌集 春下より

訳:花の色は虚しく褪せてしまった、春の長雨に降りこめられている間に私の容姿もすっかり衰えてしまった、 ー いたずらに物思いにふけって過ごしている間に。

5. 僧正遍昭(十七首)

六歌仙の1人で、官人時代の歌は良岑宗貞として、その後出家してからの歌は僧正遍昭として記録されている

五節の舞姫を見てよめる

天つ風雲の通ひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ

古今和歌集 雑上より

訳:空吹く風よ、天女たちが帰って行く雲間の通り道を吹き閉ざしておくれ、美しい乙女たちの舞い姿を、もうしばらく地上に留めておきたいから。

まとめ

古今和歌集を通して平安時代を生きた歌人達の価値観や豊かな表現力知ることで、日常のふとした風景も以前とは違ったように見えてきます。古今和歌集には非常にたくさんの個性豊かな和歌が収録されていますので、気になった方はぜひ手に取ってお気に入りの一首を見つけてみてください!

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