春を彩る「花」を詠んだおすすめ和歌8選を古今和歌集より紹介

和歌
春を彩る「花」を詠んだおすすめ和歌8選を古今和歌集より紹介

春を彩る花々の和歌

日本文学の古典の中で、自然の美しさは重要なテーマとされてきました。特に花は人々の感情や季節の移り変わりを表す象徴的な存在であり、多くの歌人たちによって花々が描く豊かな情景が詠まれてきました。この記事では、古今和歌集から春の花をテーマとした和歌を厳選し紹介していきます。花々の姿から歌人たちがどのような思いを詠み上げたのか、ご覧ください。

1. 春の霞に隠された花を詠んだ一首

春の歌とてよめる【紀貫之】

三輪山をしかも隠すか春霞人に知られぬ花や咲くらむ

古今和歌集 春下より

訳:三輪山をこのようにも隠すのか、春霞よ。世の人の知らない桜が咲いているのであろうか。

2. いつまでも眺めていたい春の花々

春の歌とてよめる【そせい】

いつまでか野べに心のあくがれむ花し散らずば千代も経ぬべし

古今和歌集 春下より

訳:いつまで、この花の咲いている野に、我が心のあこがれる事であろうか。もし花が散らなかったならば、千年の久しい間も、この野で経たせる事であろう。

3. 遠くの山から運ばれてくる花の香り

寛平の御時、后の宮の歌合の歌【在原元方】

霞たつ春の山べは遠けれど吹き来る風は花の香ぞする

古今和歌集 春下より

訳:霞の立っている春の山は遠いけれども、そなたから吹いて来る風は、その山の霞隠れの花の香を伝えるのか、花の香がする事であるよ。

4. 散る花を惜しむかのような鶯

鶯の鳴くをよめる【そせい】

木伝へばおのが羽風に散る花を誰に負ほせてここら鳴くらむ

古今和歌集 春下より

訳:枝移りをすれば、自分の羽風で散る花であるのに、その散ることをだれのせいにして、しきりに鳴くのであろうか。

5. 雪のように散っていく花

題しらず【よみ人しらず】

駒並めていざ見に行かむ故里は雪とのみこそ花は散るらめ

古今和歌集 春下より

訳:駒を連ねて一しょに、さあ見に行こう。故里は、雪そのままのように花が散っているであろう。

6. いつの間にか雨で散ってしまった花

題しらず【小野小町】

花の色は移りにけりな徒にわが身世にふるながめせし間に

古今和歌集 春下より

訳:見ようと思っていた桜の色は、衰えてしまったことであるなァ、空しくも。わが身が男女関係の上の歎きをしていたのにゆかりある長雨で、見られずにいる間に。

7. 避けることのできないほど美しい花々

志賀の山越えに、女の多く逢へりけるに詠みてつかはしける【紀貫之】

梓弓春の山べを越え来れば道も去りあへず花ぞ散りける

古今和歌集 春下より

訳:春の山を我が越えて来ると、避けられるはずの道も避けきれないまでに花が散っていることであるよ。

8. つい立ち寄ってしまう花の陰

亭子院の歌合に、春のはての歌【みつね】

今日のみと春を思はぬ時だにも立つことやすき花の蔭かは

古今和歌集 春下より

訳:今日限りだと春を思わない時でさえも、立ち去る事のたやすくできる花の蔭であろうか、ありはしない。

まとめ

これらの歌から分かるように、春の訪れを告げる花々の姿に歌人たちは多くの思いを寄せてきました。

儚い花の姿にこころを寄せながら季節の移ろいの中に美を見出したり、時には人の心に例えたりする和歌を通して、平安時代の人々の自然を愛する心やその生活の一部を垣間見ることができるように思います。

古今和歌集の花の和歌を通じて平安の歌人たちの感性に触れることで、日々の景色の中にも新しい気づきが見つけられるかもしれません。

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