年に1度しかない二星の逢瀬、「七夕」について詠んだ和歌を7首を古今和歌集より紹介

和歌
年に1度しかない二星の逢瀬、「七夕」について詠んだ和歌を7首を古今和歌集より紹介

年に1度、織姫と彦星が会える日「七夕」

七夕の伝承は中国より奈良時代後期に日本の宮廷に伝わっていたとされおり、以降、七夕をテーマにした和歌はさまざまな歌人によって歌われています。

旧暦では7月から9月までが秋となるため、古今和歌集においては秋の始まりの時期の歌として多くの七夕の和歌が秋上に収録されています。

今回は平安時代の人々から見た七夕を感じ取れる和歌を古今和歌集より7首ご紹介します。

1. 織姫の気持ちを詠んだ和歌

題しらず【よみ人しらず】

秋風の吹きにし日よりひさかたの天の河原に立たぬ日はなし

古今和歌集 秋上より

訳:秋風の吹き立った日、すなわち立秋の日から、天の河原に立っていない日とてはない。

2. 紅葉が天の河の架け橋になるのではと想像しての一首

題しらず【よみ人しらず】

天の河紅葉を橋に渡せばや棚機つ女の秋をしも待つ

古今和歌集 秋上より

訳:天の河は、紅葉を橋として渡すのであろうか。棚機つ女は、その紅葉する秋をひたすらに待っている。

3. 織姫と彦星の気持ちを想像した歌

題しらず【よみ人しらず】

恋ひ恋ひて逢ふ夜はこよひ天の河霧立ち渡り明けずもあらなむ

古今和歌集 秋上より

訳:一年の永い間を、別れて恋い恋いして来て、逢う夜といっては、今夜一夜のみである。天の河に一面に霧が立って、そのために、夜は過ぎても、明けないようであってほしい。

4. 彦星の気持ちとこの時代の男性の気持ちを重ね合わせた歌

同じ御時、きさいの宮の歌合の歌【藤原興風】

契りけむ心ぞつらきたなばたの年に一たび逢ふは逢ふかは

古今和歌集 秋上より

訳:約束をしたであろうところのその心が、全く酷いものであることよ。棚機つ女の一年に一度逢うのは、逢うといえようか、いえないものだ。

5. 平安の女性の目線から男女の関係について詠んだ歌

題しらず【そせい】

今宵来む人には逢はじ棚機の久しき程に待ちもこそすれ

古今和歌集 秋上より

訳:今夜来るだろうところの人には逢うまい。棚機のように、久しい間を待つという厭わしいことになるであろう。

6. 彦星の立場から、7日の夜明けの悲しみを詠んだ歌

なぬかの夜の暁によめる【むねゆきの朝臣】

今はとて別るる時は天の河渡らぬさきに袖ぞひぢぬる

古今和歌集 秋上より

訳:今は別れるべき時だといって別れる時には、帰りには徒渉するべきものとなっている天の河を徒渉しない前に、袖は川波に濡れたがように、涙のためにぐっしょりと濡れたことであるよ。

7. 七夕の逢瀬が終わってしまった8日の歌

やうかの日よめる【みぶのただみね】

今日よりは今来む年の昨日をぞいつしかとのみ待ち渡るべき

古今和歌集 秋上より

訳:今日からは、おっつけ来る年の昨日という日を、いつその日が来るだろう、早く来よと思って、その日ばかりを待ち続ける事であろう。

まとめ

紹介した和歌のように、平安の貴族たちは織姫、彦星の立場になってその気持ちを想像したり、逢瀬が大変であった当時の恋愛文化・自らの経験などと照らし合わせて多くの和歌を読んでいたことがわかります。

同じ星空を見上げているにも関わらず、違う視点から歌われている思想に注目して読んでみると、千年以上前に生きていた平安の人々の考えや生活の一部が垣間見えてくるかもしれません。

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